本のはなし 6

gogoemipon2005-04-08

[BOOKS] 銅版画でも以前やっていた布素材の作品群もモチーフはいつも動物たち。いつでも動物を見るとき、あのサイのヨロイ、シマウマたちのきちんとした縞模様、ジュゴンの完璧なフォルムにただただ感動してしまう。とくに惹きつけられるのはやはり母子で、NHKやスカパーのAnimalPlanetやNational Geographicチャンネルの映像に釘付けになる。鳥たちの抱卵や子育ても健気だし、ほ乳類と来たら、母親達の愛情深さ、その表情の中にある誇らしさと共に、恐れや不安、母親ならではのうっとおしさ、というか「あー、やってらんないわよ、もー」がうかがえるところ。あぁ、おかあさんってみんないっしょだな、と思う。かわいいけどめんどっちー。保護しなきゃだけどめんどっちー。動物だから育たない個体を切り捨てなくてはならないこともあるし、まず外敵からおのれを守らねばならぬ。面倒で命がけだけどほんとうにこどもを愛し、守っている。自分の得手勝手な欲望を満たすためにこどもを放って殺して(あえて言う!)しまう父母がいる人間たちと比べると素直に感動。さて人間に最も近い霊長類の子育ては、というと



「お母さんになったアイ」 松沢 哲郎
京都大学霊長類研究所の松沢教授が、30年近く飼育下におき言語教育を続けてきているチンパンジーのアイちゃんを中心に書いた本である。一般向けでわかりやすく、アイちゃんのはじめてのあかちゃん「アユム」の育児についてと、野生チンパンジーの集団の解説などが書かれている。人工飼育下では何と50%のチンパンジーが育児拒否をするそうで、ゲノムに書き込まれているはずの種の保存に関わる本能であるべき育児が出来ない、というのは決してこどもの養育が本能でなく社会的成熟を必要とする事が具体的に記されている。「進化の隣人」とするチンパンジーの言語、文化、社会的知性を論じながら、人間のあかんぼうとの比較をし、チンパンジーの研究を通じて生き物にとっての「世界の見え方」をとらえようとする真摯な研究者のすがたが見える。

わたしはもとより霊長類だいすき、で、なによりオランウータンが世界でいちばん好きなどうぶつ。もしあなたに赤ん坊が生まれてわたしがご対面したとき「ぅわー、オランのこにソックリ〜、キャー」と言ったら最大級賛辞と思ってください、という程。アイちゃんはチンパンジーだけどすばらしいお母さんぶりで尊敬している。京都大学サイトではアイちゃんのHPも別にあってアユムくんの出生から、その発達段階の実験や検診の様子、アイちゃんがほかの個体と初めて母子で対面する様子などが詳しく書かれたスタッフの育児日記があるので興味のあるかたはぜひ。



今日の一枚    「お外に行きたいっ」