本のはなし 7

gogoemipon2005-04-18

[BOOKS] 今週から何かと忙しくなる予定。春休みだったスペイン語のレッスンも今週からなので、自作のドリルで復習しなくてはならないし。でもこの2週間は比較的のんびりできたので銅販制作の方もわりと順調、いいかんじ。あとはにゃんずが元気でいてくれればバンザイです。



「オランウータンとともに」ー失われゆくエデンの園からー ビルーテ・ガルディカス



本書は1971年からカリマンタン島(ボルネオ)で膨大な時間を費やして野外研究を重ねているガルディカス博士の上下2巻にわたる記録である。オランウータンの継続観察はむずかしい。チンパンジーは群居性共同生活を営み、ゴリラはシルバーバックと呼ばれるオスを頂点とした家族集団を形成しているため、一個体を観察するのも比較的容易に出来る。オランウータンは半孤独な生活形態で移動しつつ菜食する。母子の絆は深く、メス同士の社会的関係もあるが基本的には他個体とは距離を置く。しかも生活拠点はジャングルの樹上とくれば観察のために付いて歩くのも簡単に行かない。ガルディカス博士は30年ものあいだ、現地で研究を続けている。

類人猿の野外研究ではゴリラのダイアン・フォッシー博士チンパンジージェーン・グドール博士が世界的に著名であるが、ガルディカス氏もまたリーキー財団の支援から研究を始め、リーキー三姉妹として活躍している。こうした類人猿の長期にわたる野外研究が、すべて女性研究者の手で行われているのは詳細な観察能力が高く、忍耐強いこと、また類人猿にとっては攻撃対象となりがちなオスではない事が大きく関係しているようだ。わたし達はゴリラやオランウータンのように外見上はっきり性差が見て取れる種はともかく、チンパンジーやヒヒなどの真猿類、キツネザルのような原猿の性別はすぐにわからない。人間だって外見上一方が倍近く大きい、とか、顔立ちに共通した性差がないのにもかかわらず、類人猿たちは人間の性差を見てとれるのだ。それにしても欧米で生まれ育って教育を受け、文明を甘受してきた3人が、過酷な環境下でこれほど長く研究を続けて来たのは驚異的。この3種の類人猿の行動様式や生活環境などが世界に知られ、現在の自然保護活動や環境保全に大きな影響を与えたのはこの3博士の偉大なる功績のひとつだとつくづく思う。フォッシー博士は残念なことに1985年カリソケ研究所で殺害されているのが発見された。未だ犯人は不明なまま。シガニー・ウィーバー主演で「愛は霧のかなたに」というフォッシー博士の生涯が映画になっているが、私は未見。
さてガルディカス博士のこの長い記録の中には研究対象となった野生オラン、人間に密売されていたこどもたちを森へ帰すためのリハビリ課程などと共に博士の人生も綴られている。ごく若いときからオランウータンの研究を志しながらも実際にカリマンタンへ赴くまでの長い道のりへの焦燥、最初のご主人との離婚までの経緯、ボルネオ政府や現地の人々との交流、またダヤク人のご主人との再婚や3人のこどもたちへの思いなど、まさに半生記。かなりの量があるけれど機会があればぜひ読んでください。博士やグドール博士はアイのいる京都大学犬山霊長類研究所に招かれて講演活動を行ったり、アイと対面したりもしている。

ここのところ類人猿関係の本をいくつか読んでいることも、もともとオランだいすきということも相まって、これはいちどオランのリハビリセンターに行かねばならぬ、と思いもあらた。ウミガメの保護センター見学などとセットになったエコ・ツアーとかジャングルクルーズとセットになったマレーシア・コタキナバルのセピロク保護区ツアーとか、あるのよ、いろいろ。わたしの天敵「アレ」さえいなきゃいいんだけどいるでしょうねぇ。それだけがわたしの足を止めるのだー。



今日の一枚 「うりゃぁ〜」