本のはなし 14

gogoemipon2005-12-20

[BOOKS] 連日の寒波。

いや、まだ雪降ってないからマシだな、東京は。

さて、ひさしぶりの本のはなしです。けっこう読んではいるのだが、流し読み。「このミス」も目を通してないし、年々上位作をひとつも読んでないんだよな。



さまよう刃」 東野 圭吾

5年前に妻を亡くし、15歳のひとり娘と暮らす長嶺は花火大会の夜、行きずりの未成年者達に娘を拉致され、強姦の末に殺害される。密告電話によって手がかりをつかんだ長嶺は犯人の一人を殺害、もうひとりを探して失踪する。事件を追う警察の視点と長嶺の視点を絡ませた展開。やりきれないといえばあまりにもやりきれない作品ではあるが、少年法の限界を認識せざるを得ない昨今の数々の事件を思うと、ギリギリな提言とも言える東野氏の渾身の一作。

白昼家に押し入られ、妻を強盗・強姦殺人で失い、赤ちゃんも殺されて押入れに押し込まれた夫が、未成年の犯人にコメントした時のことを思い出す。「犯人がどういう成育環境でこうなった、とか更正のチャンスがあるとか、どうでもいいんです。わたしは彼の犯罪に処罰をしてくれと言っているだけです。やったことに罰を加えてもらわなければならない。もし司法がそれをしてくれないなら、彼が出てきたときにわたしが殺します。必ず殺します」と。淡々と静かに言い切った。本作にも出てくるが犯人の更正がなぜ罪の償いになるのか、被害者にとってはまさに「何故そんな人間の踏み台にされなくてはならないのか」

少年法だけの問題ではなく、死刑と名ばかりの「無期」懲役というふたつの刑の開きはあまりに大きい。終身刑のない日本で、もういちど国家による処罰のあり方を考えるべきだ。



「僧正の積木唄」 山田 正紀   文春文庫

ヴァン・ダインの「僧正殺人事件」は事件の真相をまちがっていたのか?あの事件の関係者があの場所で殺害され、その後次々と殺人が起きる。現場にはあの忌まわしい「僧正」の署名が入ったマザー・グース。事件に取り組むのはあの金田一耕介である。あのあのづくしでミステリファンには楽しい。二人の巨匠作家へのオマージュ、にとどまらない力作で、事件の起きた第二次世界戦争前の米国におけるはなはだしい日本人排斥と差別を背景にしている。本家のネタバレも無くファイロ・ヴァンスも登場する。まずはダインの本家を読んでからでもいいですね。



今日の一枚  「ムズカシイことはわからないの。」