本のはなし 15

gogoemipon2006-01-19

[BOOKS] なんとかリカバリ

自分は食べられないのに家族のために料理してた。



東野圭吾氏の「容疑者Xの献身」第134回直木賞受賞。6度目の正直。好きな作家のひとりだが、地味というかしっかり書くひとなので、これだけ候補に挙がりながらも中々受賞に至らず、ご本人もオヨロコビでしょう。めでたいです。受賞作は図書館にリクエストしているものの、まだ300人以上待ってるのよぉ(泣) いずれレビューします。



「その日の前に」  重松 清

昨年のベストセラー、7編の連作短編である。これを読んで泣かないっちゃ人間じゃないでしょ、な作品なんですが。昨今の「泣ける」流行り、何なんでしょか。みんなそんなに泣きたいの? 本でも映画でも「泣ける」が売り文句、わたしはひとつも見てないが韓流もそうした流れのひとつなんでしょうか。

今の風潮のひとの生き死にをエンターテイメントにすることをどうしてもスンナリ飲み込むことが出来ない。難治性疾患の患者さんとその家族は精神的・経済的その他、様々な問題を突きつけられながら治療していて、その重さを思うとき、軽々に発言するのは憚られる。家族とか愛とか友情とか思いやりとかって大切なことだ、というのを死と引き換えにしないと語れないんでしょうかね。本作品は力作でしたけど。



信長の棺」  加藤 廣

こちらも昨年話題だった歴史ミステリー。「本能寺の変」後、徹底した捜索がされたにもかかわらず信長の遺体は見つからず、秀吉が執り行った葬儀の棺の中には木像が収められていた。信長祐筆を務め、唯一の伝記を残した太田牛一を主人公に、その秘密を探る。

著者のあとがきにあるように当時「本能寺の変」前後に異様な動きがあったとされる4人に焦点を当て、歴史の謎解きをしていくのが面白い。読み手も牛一と一緒にあれこれ想像するのは歴史モノの楽しみである。



「あやかし」  高橋 克彦  双葉文庫

宮城県S町で起きた異様な交通事故。加害者の衣服に付いた被害者の血液と思われるもののの分析結果は、「人間のものではない」。大学病院の研究員・森下はその血液を追ううちに異様な事件に巻き込まれる。

高橋氏ならではのトンデモSFである。文庫で上・下合わせて1000ページを越える量。んな、まさか、と突っ込みつつ、グイグイ読まされることになる。奇想天外な設定でもその筆力と、民俗学やその他博識な高橋氏の引き出しから縦横無尽に出てくる知識の数々でとても楽しめる。高橋作品未読な方はぜひ「竜の棺」を! オモシロイですよぉ。



今日の一枚  「ぐりこのほん、ってあるの?」