宮沢賢治童話大全 2

gogoemipon2006-01-30

[BOOKS] 年末に片付けなくちゃ、と思いつつもほったらかしだった戸棚の中や本の整理。昔のパソコンの取説なぞがぞくぞく。今、うちの玄関にはそんな古本や雑誌が山と積まれている。こういうときに畳み掛けるようにやっちゃわないとねー。



さてさて、宮沢賢治についての続き。宮沢賢治というと、東北という地、農学校教師また後には鉱山技師となったその堅い職業、「けふのうちにとほくへいってしまふわたくしのいもうとよ」の出だしで有名な「永訣の朝」の慟哭、「雨ニモマケズ」のストイックさ、などのイメージが強く、貧困や病、厳しい労働という現実の対比としてのファンタジー、という印象を持っている人が多いような気がする。宮沢賢治自身はとても裕福な家庭に育っている。彼の祖父は質屋・古着商として大成功した人物で、賢治は現岩手大農学部である盛岡高等農林学校卒業後も研究生として残る。いわば大学院出だ。もちろん富裕家庭にあっても、農業という天候・土地に左右される困難に心を寄せていたからこそ死の間際まで相談事など引き受けていたのだろう。

賢治はよく何かに惹かれるように夜の山を彷徨ったり、幻ともつかない光景を目にしたり、したそうだ。このひとの作品を読むと、何だか彼自身はこの世から乖離しているような気がしてたんじゃないか、というか、生きている現実感が薄かったのじゃないかと思えて仕方ない。本当の居場所は別の世界にあるような気持ち。だからこそ現実につなぎとめてくれる職業を選んだのじゃないかなぁ。農業ってそれこそ手を使い、目を使い、体ごと必要だもの。確実な現実感を得られる。

童話については、切り取られた場面から始まるかんじ、ふっと消えるような終わり方、その唐突さに昔は馴染めなかった。ひどく不安定に感じる。穏やかでまじめな人柄といわれた彼の中にあった「現実感の薄さ」なのかな、と思ってしまう。賢治ファンにとってはそういうところが魅力なのだろうか?

今回読み直したり初めてだったりの作品、やはり何か薄い紗がはさまってる感じ。すごく好きな作品もあるんだけど、それは設定が好き、というか、作品そのものじゃないような。絵本のかたちになっているものだとあまり感じないのよねぇ。うーむ。このはなしまだ続きます。



今日の一枚  「オレはねむくって考えらんないよー」